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番外編 キラキラの笑顔

「ねぇ、パパ」 一太が彼のシャツの裾をツンツンと引っ張った。 「すごい数だな。みんなに配るのか?」 かごいっぱいにいろんな種類の菓子パンがこれでもかと入っていた。 「ううん」 一太が首を横に振った。 「これねゆげさんのところにおくってあげて。ねぎしさんいないでしょう?だからおくってあげて」 「ん?どういうことだ」 何を言ってるのか分からなくて。こういう時は、 「橘、ヘルプ!」 そうままたんを呼ぶのが一番早くて手っ取り早い 「遥琉には内緒にしていたんですが、根岸さん、週に一回弓削さんに好きな食べ物を送っているんですよ。一日でも早く元気になってここに戻ってくるようにと願いを込めて」 「弓削の好きな食べ物って何だっけ?」 「は?ふざけているんですか?何年弓削さんと一緒にいるんですか?」 橘さんの頭に角が一本、いや二本にょきにょきと生えてきた。 怒らせちゃ駄目だよ遥琉さん。 「ふざけてないよ」 「ま、あなたは未知さんしか眼中にありませんからね。弓削さんも根岸さんも顔に似ず甘党ですからね。ソウルフードのクリームボックスや、そこの棚に並んでいるままどおるや檸檬(れも)や薄皮饅頭などのお菓子が大好きなんですよ。例え弓削さんが食べれなくても鷲崎組のみんなに食べてもらうようにと毎回大きな箱で送っていたんですよ」 「根岸もなかなかやるな」 「根岸さんの息子さんと私たちは同世代ですからね。根岸さんにとって私たちはみな息子も同然なんですよ。だから、うんと可愛がって、なにかと面倒をみてくれるんです」 「伊澤も焼きもちを妬ききれないな」 「ですね」 橘さんが一太から買い物かごをもらい、そのままレジに向かった。

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