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モテ男の受難

彼の香りが、ふわりと鼻をくすぐる。 彼の胸元は、僕を簡単に包みこんでしまえるほど広い。 「きみが傍らにいてくれる。それだけで心が不思議と落ち着くんだ。それにきみや子どもたちの笑顔を見ると疲れが一瞬で吹き飛ぶ」 柔らかな声とともにお腹を労るように静かに抱き締められた。 「なぁ、未知……」 しばらくの間目を閉じ何やら考え事をしていた彼がゆっくりと口を開いた。 「シワンのヤツ、どこでどう勘違いしたのか俺が地竜の情人《イロ》だと今の今まで思い込んでいたらしい」 「え?」 目をぱちくりさせた。 「普通驚くよな。俺もだ。シワン曰く、地竜は強い男たちからモテモテなんだと。だから、てっきり俺がボスの情人《イロ》だと思ったらしい。シワンは、俺と地竜を何がなんでも別れさせるために勝手に付いてきたみたいだ。状況がいまいち飲み込めずしばらくの間ポカーンとしていた。大丈夫か未知?」 「う、うん」 地竜さんの言動、僕に対する態度を見れば一目瞭然なのに。 なんでまたそんな大きな勘違いを起こしたんだろう。不思議でならなかった。 「じゃあなんであの時……」 「人の噂ほど怖いものはないからな。フーが結婚した、どうやらデキ婚だって噂を信じて鵜呑みにしていたらしい。だから、未知のお腹を見て、フーの結婚相手が未知だと思い込んだらしい」 「そうなんだ」 「変な騒動に巻き込まれる前に誤解が解けて良かったな」 「うん」 目尻に口付けられ、微笑むと、唇に唇が触れてきた。

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