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番外編 モテ男の受難
朝御飯の準備をする橘さんの邪魔にならないようにお皿を食器棚から出していたら、背中に突き刺さるような冷たい視線を感じた。
ちらっと後ろを振り返ると、出入口に寄り掛かるシワンさんと目が合った。挨拶しようとしたら、鋭い眼光で睨まれた。
誤解を解くはずが、かえって火に油を注ぐことになってしまった。
「困ったものですね。飼い主の指示に従わず、勝手な行動ばかりして。痛い目に遭わないと分からないんですかね」
橘さんが目をつり上げ語気を強めた。
「橘さん聞こえている」
「聞こえるようにわざと言ってるんですよ」
橘さんが怒るのも無理がない。
「泥棒の真似事をして鞠家さんと柚原さんに注意され逆ギレするし、若い衆としょっちゅういさかいを起こすし、許されることと許されないことがあります。ここは彼がいる組織とは違います」
キッパリと言い切ると、かごの中にあったオレンジをひとつ掴むと、それをシワンさんに向かって投げた。
左手でガシッとキャッチすると、投げられたオレンジに目を向けるなり橘さんをきっと睨み付けた。
「橘さん……?」
「絆という文字を書きました。愛人のように日本語と中国語では意味がまるっきり違うみたいですよ」
シワンさんの背後にフーさんとウーさんがぬっと気配もなく現れた。
ふたりとも目をつり上げてシワンさんを睨み付けた。
言葉は分からないけど、俺達のマーやままたんを睨むな。そう言ってるように感じた。
「マー」亜優さんもばたばたと足音を鳴らして駆け付けてくれた。
「マーミンナノマー。ママタンミンナノママタン。アップ。メ」
片言の日本語で言葉を紡ぐと、頬っぺたをこれでもかと膨らませシワンさんを睨み付けた。
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