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番外編 モテ男の受難
「だ、大丈夫です。紗智とはラブラブなので……それはそうと話を戻しましょう。シワンのヤツ、飲み屋で酔っ払いといざこざを起こし、駆け付けたサツに頭突きを食らわせ逃げたんです」
鞠家さんの額からは冷や汗が吹き出していた。
「あらそうなの。随分とやんちゃなのね。誰かさんの若い頃にそっくりね」
紫さんがちらっと度会さんを見てクスクスと笑った。
「おぃおぃ、シワンと一緒にしないでくれ」
度会さんが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「それはそうと、ヤツの飼い主《地竜》はいつ戻るんだ?」
「支援者を募るために全国を講演して飛び回っているので、当分の間は戻ってこないかと」
「芫を押し付けられ散々な目にあったんだぞ。橘、誤解するなよ。亜優は違うぞ。お前さんは未知の子どもたちのことになると人格が変わるからな。そんなおっかねぇ顔するな。可愛い顔が台無しだ。お、そうだ!やぼ用を思い出した。それじゃあ、あと頼むな」
度会さんが急にそわそわしはじめ、逃げるように席を立った。
「あらあら、そんなに急いでどこに行くのかしら」
紫さんがおほほと笑った。
度会さんと入れ違いに若い衆が大きな箱を抱え庭に入ってきた。
「紫さん、一太くん宛に鷲崎さんから荷物が届いてますが」
「疑う訳じゃないけど、まずは鷲崎に連絡をして。荷物を送ったのか確認してちょうだい」
「それなら私が連絡します」
「橘、頼むわね」
橘さんがスマホを耳にあてがい、立ち上がろうとしたら、
太惺がハイハイで勢いよく橘さんの胸元に飛び込んできた。スマホが欲しいのかお手手を懸命に伸ばした。
「じゃあ、ままたんと一緒にもしもししましょうね」
片手でひょっいと抱き上げると、部屋の奥に向かった。
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