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番外編 モテ男の受難
午後から天気が下り坂の予報に、雨が降る前に帰って来ればいいのに。一人で気を揉んでいたら、
「ママただいま!」
元気いっぱい子どもたちが帰ってきた。
「いちたがつくったんだよ」
「ハルちゃんもつくったんだよ。みて、みて」
目をキラキラと輝かせ、頬を綻ばせ、作ってきた和紙を競うように見せてくれた。
「奏音くんが作ってきたの見たいな」
少し離れたところで寂しそうにポツンと佇む奏音くんに気付き、にこっと笑んで声を掛けた。
「……」
和紙を両手で抱き締めたままなかなかはじめの一歩が出ない奏音くん。
何か言いたげな眼差しでじっと見つめられた。
「奏音のヤツ、未知を一回でいいからママって呼びたいんだと」
彼が背後からすっと現れた。
「大安場史跡公園から駅前にあるスペースパークに移動したんだが、どこに行っても仲の良さそうな家族連ればかりで、奏音、ずっと下を向いたまま、なかなか顔を上げようとしなかったんだ」
大きな手で髪を撫でると、
「ほら、遠慮せずに行け」
そっと静かに背中を押した。
「奏音くんも上手に出来たね」
「うん。あの……えっと……」
真っ赤になってもじもじしながらも、
「……マ……ママに……これ、あげる」
ポケットから何かを取り出すとそれを手渡された。見ると和紙で作ったしおりだった。
「ありがとう奏音くん。大事に使うね」
照れくさいのか彼の背中にささっと隠れてしまった。
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