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番外編 モテ男の受難
「橘、お前の差金か?」
「な訳ないでしょう」
濡れた髪をタオルで拭きながらラフなスエット姿で橘さんが現れた。
「そんな姑息な真似しませんよ。ここちゃん、掃除機の音が苦手なんですよ。ドライヤーの音が掃除機の音に聞こえたのでしょう。それで目を覚ましてしまったんです。あやしていたらたいくんまで起きてしまったんです。おふたりを邪魔するなら徹底的に邪魔しますよ」
「相変わらずこぇーな」
「誰が怖いって?いつもままたんとぱぱたんにべったりで、パパに近付こうともしなかったたいくんとここちゃんが珍しくパパって自分たちで行ったんですよ。パパはママに夢中で構ってもらえないと分かっていてもやっぱりパパがいちばんなんですよ。健気で可愛いものでしょう。ほら、早く抱っこしてあげてください。そのうち、パパくさい。パパウザいって煙たがれ、そっぽを向かれて見向きもされなくなるんですから」
頭の痛いことを矢継ぎ早に言われ、彼はグーの音も出なかった。
その場にしゃがみ、太惺を右手で、心望を左手で抱え立ち上がろうとしたら、
「う…っ」
変な呻き声を上げた。
「子どもたちそっちのけで未知さんとイチャイチャしているからバチが当たったんですよ」
橘さんが楽しそうに笑いながら腕を伸ばし、彼の腰を指でつんつんした。すると、
「痛いんだから、頼む。触らんでくれ」
嗚咽をこらえるかのようにうずくまった。
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