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番外編 モテ男の受難
「まさかぎっくり腰になるとは思わなかった。面目ない。橘、もう少し優しく貼ることは出来ないのか?いだっ!」
真顔で湿布を交換する橘さん。近寄りがたいオーラを醸し出していた。
「ごめんなさい」
湿布のつーんと鼻にくるあの特有の匂いで気持ち悪くなってしまって。結局橘さんに丸投げしてしまった。
柚原さんは気にするなって言ってくれたけど。申し訳なくて合わせる顔がない。
マスクをして、戸の影からそぉーと覗き込んでいたら、わざわざ岳温泉からお見舞いに来てくれた惣一郎さんと和江さんに笑われてしまった。
「橘、警備の方は大丈夫なのか?手薄にならないのか?」
「茨木さんがもうじき到着します」
「なら鬼に金棒だ」
惣一郎さんが辺りをキョロキョロと見回した。
「もしかして根岸さん夫婦をお探しですか?」
「まだ鷲崎のところから戻ってこないのか?」
「えぇ。根岸さん以外に、楮山組の上田さんも、警察も血眼になって悠仁さんを探しているので、すっかり雲隠れしてしまいました」
「それじゃあ、出てくるにも出てこれないな。命が惜しいなら尚更だ」
惣一郎さんが何かに気付いた。
「何しに来た」
鋭い声で睨んだ先にいたのは蜂谷さんだった。
「若頭の側にいなくてどうする」
容赦なく叱りつけた。
「惣一郎さん」
「儂は頼んでない」
彼が助け船を出そうとしたけど、惣一郎さんは頑なに首を横に振った。
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