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番外編伝説のヤクザ、奏音くんと初対面

「一太のママは結婚する前は久田原という名字だった。一太のパパと結婚して卯月になった。それと同じだ。爺ちゃんも結婚する前は播本だった。結婚して茨木になったんだ。昔は一太の近くに住んでいた。でも、一太のパパが福島に移り住むことになって、泣く泣く離れて暮らすようになったんだ。爺ちゃんも仕事をしていたから一緒に来ることがどうしても出来なかったんだ」 お祖父ちゃんが紙パックのオレンジジュースをプラスチックのコップに移し、奏音くんの前にそっと置いた。 「ここに来てどのくらいだ?」 「えっと…」 奏音くんが手をパーにして、指で数え始めた。 「まだ二週間は過ぎてないな。なぁ、奏音、一太やハルちゃん、パパやママ、ままたんやぱぱたん、紗智や那和と一緒に暮らしてどうだ?」 「たのしい。みんなやさしくしてくれる」 「そうか。それは良かった。根岸の孫とはいえ所詮赤の他人だ。それなのになんでお前の面倒をみてくれると思う?」 奏音くんは不思議そうに首を傾げた。 「弱いものいじめしない。弱きものを助ける。困ったときはお互い様。子どもはみんな宝物。茨木さんの教えをみんなちゃんとまもっているからですよ」 「ままたん」 「茨木さんは人助けはしても、人を殺したことはありませんよ」 「お父さん、かなたにうそついたの?」 今にも泣きそうな目で橘さんの顔を見上げた。

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