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番外編 伝説のヤクザ、奏音くんと初対面
「橘‼助けてくれ‼ままたんヘルプ‼」
寝室から彼の悲鳴が聞こえてきた。
よいしょ、テーブルに手を置き、椅子から立ち上がろうとしたら、
「普通は未知なんだけどな」
お祖父ちゃんに苦笑いされてしまった。
「その未知さんが湿布の匂いが駄目で遥琉に近付けないんですよ」
「そうか。手間を掛けるな」
「いいえ。いつものことです。彼の世話は慣れてますので。未知さんは座ってて下さい。柚原さん行きますよ」
「俺?」
「あと誰がいるんですか」
目を輝かせ、足取りも軽く橘さんのあとを追い掛ける柚原さん。
追い付くと、橘さんの方から然り気無く手を差し出した。
「優璃、いいのか?」
「いいからに決まっているでしょう。それとも私とは手を繋ぎたくないのですか?」
「繋ぎたいのに決まっている」
「なら早くしてください。私だって恥ずかしいんですよ」
柚原さんは満面の笑みを浮かべると橘さんの手を取り、指をそっと絡めた。
「まさに飴と鞭だな」
「ですね」
お祖父ちゃんと地竜さんが苦笑いしていた。
東南アジアに多くの『遊び場』というものが作られていて、表向きの経営者は中国人(黒竜の幹部)。裏の経営者が日本人(梶山組)となっているみたい。
遊び場では、賭博、売春、綺麗な水、酒といったものを有償で提供しているらしく、人身売買された女性や子どもが悪どい金儲けの犠牲になっている。
日本では稼げない多額のシノギを稼いでる。
俺は人身売買されたひとを一人でも多く救いたい。
そんな話しを地竜さん、お祖父ちゃんとしていた。
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