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番外編 命の重み

「どこかで見たことがあると思ったら、テレビに出ていた、えっと……」 「周(ヂョウ)思齐(スーチー)と申します。宜しくお願いします」 「あら、日本語もお上手なんですね」 だって地竜さん日本人だもの。とは言えなかった。 お世話になっている南先生にまで嘘を付かなきゃいけないのが心苦しかった。 柚原さんが南先生に連絡してくれて。休診日だったけど、入院の準備をして急いで病院に向かった。 破水の検査をして、陽性と結果が出てそのまま入院になった。 地竜さんは彼の友人でお医者様。ぎっくり腰で動けない彼の代わりに付き添うことになったという橘さんの説明を南先生は一切疑わず信じてくれた。 フーさんとウーさんはすぐ近くにある休憩スぺースで待機してくれている。病室へ行くためにはそこを必ず通らないと行けない。ふたりはただでさえ目立つし迫力も半端ない。病院のスタッフの皆さんや、患者さん、お見舞いにきた人たちを怖がらせてないか。それが心配だった。 「あの、先生……」 おっかなびっくり聞いてみた。 「橘さんの言い付けを守り、二人とも大人しくしてるわよ」 「それなら良かったです」 胸を撫で下ろしほっと一息つくと、お腹が派手に鳴った。 考えてみたら夕御飯まだだったんだ。 エヘヘと、お腹を擦りながら笑って誤魔化した。

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