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番外編命の重み
「眠くなるまで色々な話をして、眠くなったら眠って、起きたらまた話をしよう。こんな機会もう二度とないかも知れないからな」
間近から見つめてくるその瞳は、柔らかく慈愛に満ちていた。
フーさんやウーさんら信頼を寄せる腹心にも今まで話したことがないという子どものころのこと、医者になる夢を叶えるため新聞配達のバイトとコンビニエンスストアのバイトを掛け持ちし、毎日の睡眠時間がわずか4時間だったこと、優先生から地竜さんになった経緯、行ったことのある国のこと、行ってみたい国のこと……、
お兄さんのこと。
地竜さんが言ったように、眠くなるまで彼と二人きり、ずっととりとめなく話しをした。
「組織を解散する。言うのは簡単だが、実現させるには様々な問題をひとつずつ解決しないといけない。いつか日本人に戻れるなら、そのときは優先生として、斉木先生みたく、田舎で小さな診療所を開業させるのが夢なんだ。叶える前に死ぬかも知れないが」
「地竜さんは不死身だもの。きっと叶うよ」
「ありがとう未知」
彼の指が頬に触れ、髪に触れてきた。そのとき、背後からごほんとわざとらしく咳払いする声が聞こえてきた。
「そう怒るな」
「地竜さん、ウーさんなんて?」
「俺の大事なマーに気安く触るな。そう言ってるんだ。そろそろ交代の時間だとも言ってる」
すっと立ち上がると部屋の隅に移動し、ついさっきまでウーさんが仮眠していた椅子に腰を下ろした。
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