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番外編 命の重み

着替えを済ませ、帰る準備をしていたときだった。生理痛みたいに、下腹部がじーんじーんと痛みはじめた。 「未知さん?」 「このくらいは我慢出来るから大丈夫です」 「前駆陣痛かも知れませんね」 「明日には産まれるかな」 「だといいんですけど、こればかりは分かりませんからね」 地竜さんが腰に手を添え支えてくれると、ウーさんも負けじと背中に手を添え支えてくれた。 「くれぐれも喧嘩をしないでくださいよ。未知さんが転んでしまいます」 「分かってる」 一階に下りると、根岸さんと伊澤さんが待合室のソファーに仲良く並んで座りスマホを覗き込んでいた。 「橘さん、息子さんに会ってきてください」 いてもたってもいられず気付いたときには声を掛けていた。 「俺には悠仁という名前の息子はいない」 「どういうことですか?」 橘さんと地竜さんに心配を掛けまいと彼なりに気遣ってくれたのだろう。まさに寝耳に水。ふたりとも初めて知ったみたいで驚いていた。 「覆水盆に返らずだ。どこでどうボタンを掛け違えてしまったのか……」 産まれたばかりの赤ちゃんを抱っこする女性に、奥さんと息子さんの姿を重ねたのだろう。ぼんやりと眺めると寂しそうに呟いた。 「今からでも遅くありませんよ」 橘さんが穏やかな口調で静かに話し掛けた。

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