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番外編 命の重み

腕を前で組み、わずかに険しい表情で唇をぎゅっと結ぶ根岸さん。相反する感情に苦悶していた。 「根岸、いいか?」 見るに見かねたお祖父ちゃんが声を掛け、伊澤さんの顔色をちらちらと伺いながら、隣に腰を下ろした。 「蜂谷が知り合いのデカに頼んでくれて、鞠家と三人でツラを拝んできた。身元がすぐにバレないようにするためか顔は潰され、指紋も焼き消されていた。分かっていることは30代から50代くらいの男性だってことだ」 「奏音は?」 「若い衆に口止めはしていたんだが、どこかで聞いたんだろう。柚原に、かなたのお父さん死んじゃったの?なんで?って何度も聞いていた」 「そうか」 ため息をつき、視線を落とした。 「なぁ、ちょっといいか?」 客間の隅に座っていた伊澤さんがすっと立ち上がると、お祖父ちゃんと根岸さんの間に強引に割り込んだ。 「近いんだよ。少し離れろ」 むっつりした表情で根岸さんの手首を掴むと自分の方に引き寄せた。 「伊澤、播本さんに失礼だろう」 「だったら、俺の前で他の男と好意的に話すな。頭にくる」 「播本さんは……」 「あぁ~喧しい」 伊澤さんが、まさかお祖父ちゃんにまで焼きもちを妬くとは思わなくて。根岸さんもしばらくの間唖然としていた。

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