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番外編 命の重み

「なぁ伊澤、播本に焼きもちを妬くのではなく、敬うのが筋じゃねぇか?」 鞠家さんと柚原さんに身体を支えてもらいながら彼が姿を現した。 「根岸、伊澤を連れてサツに行ってこい。もし人違いだったら、倅は生きているってことだろう。奏音のためにも白黒はっきりつけてこい」 「オヤジすみません」 根岸さんが姿勢をただすと、伊澤さんも背筋をぴんと伸ばし深々と頭を下げた。 「未知のためにわざわざ駆け付けてくれたんだろう。礼を言う」 「姐さんも亜優も俺にとって子どもも同然。どこにいても駆け付けるのが当たり前だ」 「ただ単に(陽葵)のツラを早く拝みたかっただけだろう。オヤジや播本よりも早く孫を抱っこして名前を呼びたかったんだろう」 「伊澤、余計なことを言うな」 耳を赤らめごほんとわざとらしく咳払いをした。 「なんだもうにメロメロになってるのか」 「播本さんだって曾孫にメロメロになってる癖に」 「年はそんなに変わらねぇはずだ。年寄り扱いするな」 変なところで張り合うふたり。互いに譲れないものがあるらしい。仲良く口喧嘩をはじめた。 伊澤さんは彼に注意されたばかりで、焼きもちを妬きたくても妬けず、面白くなさそうに何度もため息をついていた。

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