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番外編 命の重み

「たいくん、ここちゃんおいで」 彼が両手を大きく広げた。でもふたりは…… 掴んでいた那和さんの袖をすっと離すと、両手を上げふらふらしながらも太惺は悩むことなく大好きなぱぱたんめがけて、一歩、二歩、三歩とあんよし、胸元に飛び込んでいった。 一方の心望は紗智さんの袖をぎゅっと握り締め、キョロキョロとあちこち見回し、なかなかはじめの一歩が踏み出せないでいた。 しまいには下唇をこれでもかと伸ばしくずりはじめた。 「眠くなったのかも知れませんね」 「いっぱい頑張ったもんね」 紗智さんが心望の頭を撫でて抱き上げようとしたら、鞠家さんがむすっとして仏頂面になった。 「もしかしてここちゃんに焼きもち?なんで、なんで」 訳が分からず、紗智さんかなり困っていた。 目を擦りながら泣きじゃくる心望を、抱っこしてあやしてくれたのはお祖父ちゃんと根岸さん、それに子どもたちだった。 「いつ産まれてもおかしくないんだ。少し横になったらどうだ?」 「うん。でも、このくらいの痛みなら我慢できるし大丈夫」 「そうか?くれぐれも無理するなよ」 「ありがとう遥琉さん」 太惺も眠くなってきたのか、指をしゃぶりうとうと船をこぎはじめた。 その直後、 「オヤジ大変です!」 若い衆が息を切らし駆け込んできた。 「今度は何だ。朝から大変だって、これで五度目だぞ。子どもたちが寝そうなんだ。頼むから静かにしてくれ」 彼がしーと小声で言うと、人差し指を唇の前に立てた。

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