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番外編 命の重み
フーさんがナオさんをお姫様抱っこして連れてきてくれた。足首には包帯がぐるぐると巻かれてあった。
「会長と惣一郎さんらと酒盛りをしていた上澤先生に頼んで応急手当はしてもらった。軽い捻挫だろうって。明日、念のため整形外科を受診した方がいい。これは、上澤先生からだ」
地竜さんがメモ紙を信孝さんに渡した。
ゴールデンウィーク中の担当医の一覧表だった。
「良かった、診てもらえる病院がある」
ほっとひと息をついた。
「オヤジ、姐さんが大変なときに迷惑を掛けてすみません」
「迷惑だなんてこれっぽっちも思っていない。晴と未来の面倒は茨木さんたちに頼んだらいい」
「助かるよ」
信孝さんがチラチラとフーさんをしきりに見ていた。
「いつまで人妻を抱っこしているんだ。フー、旦那に睨まれているぞ」
日本語のあと中国語で話し掛けた。
フーさんはびくっと肩を震わせ、ナオさんを信孝さんの腕の中に静かに下ろした。
「……シェ シェ(ありがとう)」
面と向かって礼を言うのが恥ずかしいのか、顔をぷいと逸らし小声でそう口にした。
「子どもたちを何がなんでも守らないと。無我夢中だったら全然覚えていないんだ。気付いたら庭に飛び降りていた。足首がちょっと痛いけど大丈夫。土が柔らかいところに落ちたから。信孝さん、もしかして泣いてるの?え、なんで?」
ナオさんが顔を真っ赤にし背を小さく丸めた。
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