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番外編 命の重み
「姐さん、頼みがある」
恥ずかしそうに、ごほんとひとつ咳払いをする根岸さん。
「オヤジと伊澤の許可はもらってある。お腹を一回だけ、撫でてもいいか?」
「はい、もちろんです。陽葵もじぃじに撫でてもらったら喜びます」
「じぃじか、なんか恥ずかしいな。背中が痒くなりそうだ」
照れ笑いしながらも嬉しそうにお腹を撫でてくれた。
「あったけぇな。2人目も男の子だって分かって、上の子が悠人《はると》だから、悠仁《ゆうじ》って名前を付けたんだ。産まれてくるのが待ちどおしかった。大きくなったらお兄ちゃんと3人、一緒に何して遊ぼうか、すごく楽しみだった。生活は苦しかったけど、あの頃が一番幸せだったのかも知れないな」
雲ひとつない五月晴れの空を感慨深そうに見上げた。
「伊澤、悪かったってさっきから謝っているだろう。いまの方があの頃よりも何倍も幸せだ」
すっかり臍を曲げてしまった伊澤さんに平謝りする根岸さん。
「ねぎしさん!いってらっしゃい!」
「おぅ、行ってくる」
ぶんぶんと両手を大きく振る一太に見送られ根岸さんは伊澤さんを宥めながら警察署へと出掛けていった。
亜優さんはふたりの姿が見えなくなっても心配そうにそわそわしながらずっと玄関の前に立っていた。
「亜優」
見るに見かねた地竜さんが声を掛けた。
「なぁに、すぐに帰ってくる。元気を出せ」
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