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番外編 命の重み
がらんとした部屋はしーんとして、眠っているような静寂があった。
奏音くんは根岸さんの話しを最後まで黙って聞いていた。
「父さんは、やっぱりかなたのことがきらいだったんだ」
寂しそうに呟くと、ごしごしと手の甲で涙を拭いながら、ふらふらと立ち上がり縁側へと向かった。
悠仁さんの遺体を引き取ることになったのは、根岸さんでもなく、古狸の愛人という司会者の女性でもなく、内縁の妻でもなく、交際中の女性でもなかった。
「悠仁さんの戸籍を調べたら亡くなる2週間ほど前に田中巳奈《たなかみな》という県外に在住している女性と再々婚していました。まさか三股を掛けられていたとは、内縁の妻も交際中の女性も驚いてました。それぞれ三人に似たような内容の遺書を渡していて、それで話がややこしいことになってるんです。根岸さんは悠仁さんの遺体を引き取ることを泣く泣く諦めざるを得なかったんです」
「奏音くんが可哀相。いくら血の繋がりはないとしても、あまりにも酷い」
「しまいには、おそらく奏音くんが受け取るであろう遺産目当てでしょう。遺体の前で、どっちが奏音くんを引き取るかで取っ組み合いの喧嘩です。なんとも浅ましい。私も根岸さんも腸が煮えくり返るくらい腹が立って、奏音くんは何があっても渡さない。そう二人にきっぱり伝えて途中で出てきたんです」
すっと立ち上がると奏音くんへとゆっくり歩み寄った。
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