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番外編 みんなが待ち望んだ新しい命の誕生

「しばらくの間菱沼組で匿って欲しいそうですよ」 「え?」 橘さんの口から思いもよらないことを言われ驚いた。 「舎弟に弓削の世話を任せる訳にもいかないから、俺が世話をしていたんだ。どういう訳か芫に弓削との仲を誤解されて2度命を狙われた。3度目は確実に殺しにくる。中国語が分かる柚原を借りようと思ったが、寝かし付けと風呂担当がいなくなったら、橘の負担が増えるだけだ。だから、卯月に匿って欲しいと頼んだ」 「遥琉さんはなんて?」 「家のことは橘と未知に任せてある。ふたりに聞いたらいいって」 「ひとり増えてもあまり変わりませんからね。私は反対しませんでした」 ご飯担当は橘さんだ。 橘さんが反対しないなら、 「じゃあ、僕も反対しない」 七海さんが「良かった」ほっとしていた。そうなると気になるのは…… 「あの、七海さん。答えたくないなら答えなくてもいいけど、弓削さんは?」 「芫は何がなんでも弓削を奪い取る気でいる。だから、マトリの乾が紹介してくれた薬物更正施設で今月いっぱい預かってもらうことにした。表情も前と比べるとたいぶ明るくなったかも知れない。錯乱して暴れることも少なくなったかも。未知や一太やハルちゃんの顔を忘れないようにって写真を常に大事に持ち歩いている」 そう言いながらスマホを操作し、弓削さんの写真を見せてくれた。

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