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番外編 みんなが待ち望んだ新しい命の誕生
「俺と同じくらい焼きもち妬きの亭主が帰りを待っているんだ。帰ってやれ」
「絶対に嫌だ」
これでもかと頬っぺを膨らませる心さん。
「みなさん未知さんのことになると目の色が変わりますからね。たいくんとここちゃんが起きたようですから、そろそろおうちに帰りますか?」
「はぁ~~い」
遥香が右手を上げて元気いっぱい返事をした。
「ゆうくんママもかえるよ。りょうさんも」
ちょうど陽葵が口を離してくれたから、片手で急いでパジャマを直した。
「ウーさんが待機していますから、何かあればすぐに駆けつけてくれます。遥琉、夕方には顔を見せにくるはずです」
「心さん、遼成さん、お見舞いに来てくれてありがとう。遥香、ままたんのお手伝いと、ここちゃんとたいくんのお世話お願いね」
「うん、わかった。まかせて」
遥香はふたりの手を握ると、有無いわさずぐいぐいと引っ張っていった。
将来が楽しみですね。橘さんが苦笑いした。
奏音くんのお母さんも、僕と同じように話し掛けて、おっぱいをあげたり、オムツを交換してあげたりして、愛情をたっぷり注いで奏音くんを育てたはず。はじめての出産と子育ては不安だらけで、思い通りにならず、いらいらすることもあったと思う。
あどけない寝顔はまさに天使そのもの。疲れも一瞬で吹き飛ぶ。
ミルクの甘い匂いも、ぷにゅぷにゅの柔らかな頬っぺた、むちむちの腕も、すべてが愛おしい。
奏音くんのお母さんはなぜ子どもを手放したのだろう。
どんな事情があったとしても、僕なら絶対に手放したりはしないのに。
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