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番外編 悲しみの連鎖
そして迎えた退院の日。前日から厳重な警備体制が敷かれ、物々しい雰囲気が漂っていた。有名な芸能人がお忍びで里帰り出産したとか、大物政治家の家族が出産したとか様々な憶測がネットを飛び交っていた。偶然だけど、たまたま入院患者が僕の他にいないのが救いだった。病院も連休中で休み。カタギのひとに迷惑を掛ける訳にはいかないもの。
「根岸さん、昨日から寝てないんでしょう?」
「倅と刺し違えても未知を守るんだと」
彼が窓の外をちらっと眺めた。
根岸さんら菱沼組のみんなと、遼成さんが連れてきた縣一家の構成員が、根岸さんと鞠家さんの指示のもとてきぱきと動いていた。
怪文書と僕や子どもたちには絶対に見せたくないものが、自宅と組事務所に投げ込まれていたって彼から聞いた。
愛は憎しみにも、狂気にも変わる。
悠仁さんは、自分を愛してくれない根岸さんを妬み、恨んで、自ら破滅の道を選んでしまった。
これ以上を罪を重ねないためにも、何がなんでも悠仁さんを捕まえる。
遼成さんは、悠仁さんに奏音くんのお母さんの話しをどうしても聞きたかったみたいだった。
「そうだ。夏休みに入ったら、根岸と伊澤が奏音を縣家に連れていくって言ってたぞ。橘夫婦の子どもになるか、縣夫婦の子どもになるか、奏音が自分で決められるように3週間ほど滞在するらしい。柚原と龍成から片時も離れようとはしない。なかなか可愛いもんだぞ」
彼が陽葵の顔を覗き込むと、頬を指の腹で優しく撫でてくれた。
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