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悲しみの連鎖

カタン、ドアが静かに開いた。 「え⁉なんで⁉」 紙袋を下げた紗智さんが入ってきたからびっくりして目を開いた。 「紗智が未知の身代わりになる。職員用の通用口の前に車を横付けさせる」 「紗智さんを危ない目に遭わせる訳にはいかない」 「僕は大丈夫。高行さんと一緒だもの。えっと、夫婦…共同…作業…だっけ?間違えてない?マーのために頑張る。心配しないで。これね、遼成さんからマーに、ななちゃんからひまちゃんにプレゼントだって」 紙袋を渡されそぉーと中を覗き込んだ。 「あれ、これって遥香が大切にしている赤ちゃんの人形だよね?」 「うん。ひまちゃんの身代わり。借りてきた」 人形の下に水色のベビードレスがあった。 「帽子もあるよ。ふりふりで可愛いでしょう。実はこれね鷲崎さんが選んだって。ななちゃんから聞いてびっくりした」 「そうなんだ」 僕の服もあった。広げてみるとひざ丈の薄手の長袖ワンピースと薄手のカーディガンだった。ワンピースには授乳口がちゃんと付いていた。 「それは遼成さんが。ゆったり着られて、見映えがいいようにだって。マーの服は?」 「出入口の脇にあるクローゼットの中だよ」 「服借りるね」 「そこで着替えてもいいぞ。終わるまで前を見てるから安心しろ」 「恥ずかしいから直前になったら着替える」 紗智さんが頬を赤く染めた。 「今さら恥ずかしがってどうする」 「こう見えても人妻なんです。恥ずかしいものは恥ずかしいの」 紗智さんの頬っぺたが膨らんだ。ふて腐れる顔がまた可愛い。

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