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番外編 悲しみの連鎖

「会計を済ませてくる。紗智、未知を頼む」 彼が一階の受付へと向かったけど、スマホを耳にあてながらすぐに戻ってきた。 「そうだ。有限会社武田電気設備だ。至急調べてくれ」 「ちょっとバーバのえっち!」 ちょうど着替えをはじめたところだった紗智さん。悲鳴を上げ、服で前を隠しながらカーテンの影に慌てて逃げ込んだ。 「悪気はなかったんだ。許してくれ」 彼が両手を合わせ頭を垂れてひたすら平謝りをしていた。 「エアコンの調子が悪い。明日でいいからって修理を依頼したら、業者がすぐに来たそうだ。鞠家に連絡したら、男たちの人数は3人。5分遅れてもうひとり建物に入った。これだけヤクザがいても一切動じず、顔色ひとつ変えなかったそうだ」 「マー、バーバ」 ウーさんとフーさんが駆け付けてくれた。 「紗智、会計を済ませてくる。急いで用意をしてくれ。ウーとフーは未知を連れて非常階段で一階に。出るとすぐ右側に通用口がある。そこから外に出ろ。借りている鍵だから失くすなよ」 紗智さんが通訳してふたりに伝えると、鍵を受け取ったウーさんが大切そうにポケットにしまった。

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