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番外編 悲しみの連鎖

「陽葵、お兄ちゃんとお姉ちゃんとみんなが首を長くして待っているからお家に帰ろうね」 母子手帳と着替えとオムツをリュックに詰め肩に背負い、陽葵をおくるみで包み、頭を手で支えながらそっと抱き上げた。 「紗智さん」 「僕は大丈夫」 健気にも笑顔を見せてくれた。 「ゆっくり体をなんで休ませてくれないんだろうね。困ったね。身から出た錆って度会さん達言ってたんだけど、マー意味分かる?」 「えっと…」 いきなり聞かれて答えに困った。 陽葵を落とさない様に、ベットに腰を下ろし、片手でスマホを操作し検索をかけてみると、自身が起こした悪い行いの為に、自らが苦しみや災いをうけることと書いてあった。 「そうなんだ。日本語難しい」 「そんな事ないよ。僕も分からなかったから」 紗智さんとそんな会話を交わしていたらコンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。 一瞬にして緊張が走った。 「その部屋のエアコンの点検は頼んでいませんよ」 南先生の声が聞こえてきた。 ウーさんが警戒しながらドアを少しだけ開けて廊下の様子を確認した。 「今なら誰もいないって」 紗智さんに言われ、ゆっくり立ち上がると、陽葵をしっかり腕に抱き寄せ、ウーさんとフーさんと移動をはじめた。 そのままねんねしててね。 お利口さんにしててね。 あどけない寝顔ですやすやと眠る陽葵に小さな声で話し掛けた。 普通の家庭に生まれればこんな危険な目に遇わなくても済んだのにね。ごめんね陽葵。心の中で何度も謝った。

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