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番外編 悲しみの連鎖

重たそうな非常口のドアを開けて、ちかちかと電灯が点滅する薄暗い階段を一段ずつゆっくりと下りた。 先導して歩くウーさんが心配そうに何度も後ろを振り返ってくれた。 フーさんは相変わらず無表情だけど、ペンライトで足元を照らしてくれて、歩調を合わせて歩いてくれた。 何事もなく一階まで下りてきて、ドアをゆっくり開けたら上下薄水色の作業着を着た男たちが僕たちを待ち構えていた。 通用口を塞ぐようにわざと脚立が立て掛けてあった。 何がなんでも僕たちを逃がさないつもりだ。 ウーさんとフーさんが僕と陽葵を守るためにすっと前に出た。 2メートルはゆうに越える長身のふたりに見下ろされ、男たちは思わず一歩後ろへとさがった。 そのとき、陽葵がふぎゃー、ふぎゃーと火がついたように急に泣き出した。 しーんと静まり返る院内に陽葵の泣き声が響き渡る。 引き返そうとしたら、階段を転げ落ちるように駆け下りてくる音が聞こえてきた。 彼は、危険を承知の上で身代わりになってくれた紗智さんから離れられないはず。 下腹部がまだ痛くて、身体は思うように動いてくれない。万事休す。陽葵をあやしながら覚悟を決めた。

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