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番外編 悲しみの連鎖

後部席に乗り込むと、 「良かった無事で」 光希さんと七海さんにむぎゅーと抱き締められた。 「遼成さんに助けてもらったんです」 「妹を守るのは兄として当然だって。ね、遼成さん」 「そんなこと言ったかな?」 ごほんとわざとらしく咳払いをした。 「お兄ちゃんとお姉ちゃんたちが待っているから帰ろう」 「よく頑張ったね。偉いね」 七海さんと光希さんが陽葵の顔を覗き込むと、頬っぺたを指の腹で優しく撫でてくれた。すっかり二人とも陽葵にメロメロだ。 メロメロなのはいいけど、遼成さんと鷲崎さんに焼きもちを妬かれないかヒヤヒヤした。 ウーさんとフーさんが乗り込むのを待って車がゆっくりと走り出した。 「あの、龍成さんと蜂谷さんは?」 「龍成さんは根岸さんの倅に、蜂谷さんは藁谷にそれぞれどうしても聞きたいことがあるって」 「特に藁谷はダオレンや、他の幹部の行方を知っている可能性がある」 「それはどういうことですか?」 「新宿歌舞伎町にフーインという会員制の高級バーがある。そこで楮山と上田が、黒竜の幹部を接待している。藁谷はそこに出入りしていたから何らかの事情を知っている可能性があるって。甲崎さんと乾さんの彼氏が、藁谷を東京に移送するためこっちに向かっている」 「未知、ゆっくりは出来ないと思うけど、3週間は大人しくしてないと」 「光希の言う通りだ」 ふたりに釘を刺されてしまった。

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