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番外編悲しみの連鎖

「着替えてくるね」 奥の部屋に向かおうとした紗智さんを、後から追いかけてきた鞠家さんが、 「ちょっと待った!」 と慌てて止めた。 「10分だけでいい。頼む、そのままの格好でいてくれ」 「え、あ、あの……高行さん!」 肩にひょいと軽々と担ぐとどこかに連れていってしまった。 「真っ昼間から何をしているんだか。いちゃついている場合じゃねぇだろう」 彼がはぁ~~とため息をついた。 「どっかの誰かさんも年がら年中ムラムラして、所構わずいちゃついている癖に。人のことを言えるんですかね」 「おぃ橘、子どもたちの前ではそれ以上は禁句」 耳の痛いことをズバッと言われ、さすがの彼も早々に白旗をあげた。 アルバの実質的経営者で特定商法取引法違反と殺人容疑と覚せい剤取締法違反の疑いで全国に指名手配されていた藁谷と、腹心のふたりが逮捕されたニュースは瞬く間に日本中を駆け巡った。報道記者と野次馬に揉みくしゃにされながらも藁谷らを東京に移送するため新幹線に乗り込む甲崎さんと国井さんの姿がテレビに映っていたって彼が教えてくれた。 でも、いくら待てど暮らせど悠仁さんのニュースは流れなかった。 彼や橘さんに聞く訳にもいかないし。 「じぃじ大丈夫かな?ひまちゃんが産まれた日に会ったきりだものね。会いたいたよね」 添い寝しながら陽葵を寝かし付けていたら、ドアが静かに開いた。 誰だろう。上体を起こそうとしたら、 「寝てていいぞ。こっからでも陽葵の顔は見える」 あ、この声……

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