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番外編 悲しみの連鎖
「めんげぇな。目元は姐さん似かな。口はオヤジ似かな」
息が荒く苦しそうな声にはっとして起き上がった。
「根岸さん、怪我……」
見ると右手のてのひらから手首にかけて包帯がぐるぐると巻かれてあった。
「たいしたことない。こんなの掠り傷だ」
なんとも言い表しがたいほど悲痛で、寂しそうな苦笑を浮かべた。
「陽葵を見ていると昔を思い出すよ。どこでどう道を間違えたのか……アイツは一切躊躇することなく、姐さんの身代わりになった紗智に刃を向けた。俺の知る倅はもうどこにもいなかった」
「いまは無理でもいつか悠仁さんと仲直り出来る日がきっと来ると思う」
「いつか……か。そんな日が来ればいいけれどな」
根岸さんがはぁ~と深くため息をついた。
「親子して頑固者だからな、困ったもんだ。それに素直じゃねぇし」
背後からぬっと現れた伊澤さんが根岸さんの身体をそっと支えた。
「これ以上、オヤジや組に迷惑を掛ける訳にはいかない」
「根岸さん、お願いだから辞めるなんて言わないで。お祖父ちゃんや渡会さん、紫さんたちと一緒にじぃじとして陽葵や子どもたちの成長を見守って欲しい」
「姐さん……」
はっとし目を潤ませる根岸さん。
「もっともっと一緒にいたい。根岸さんは何も悪いことしていないんだよ。迷惑を掛けているのは僕の方だもの」
「ありがとう……未知……悠仁にも人を思う優しさがあればな、ちっとは違っていたかも知れないな」
「おぃおぃ、泣くヤツがあるか」
「泣いてねぇよ。泣く訳がないだろう。目にゴミが入っただけだ」
「本当か?」
伊澤さんが笑いながら根岸さんの目元をハンカチで拭いた。
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