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番外編 悲しみの連鎖

その奏音くんは、光希さんと柚原さんの間にちょこんと座っていた。柚原さんとばかり話しをしてなかなか光希さんの顔を見ようとはしなかった。 「奏音くんは戸惑っているんですよ。東京から来た見ず知らずの人たちが、初対面にも関わらず自分に優しくしてくれる。しかもうちの息子になるならいかって急に言われたんですから無理もありません。奏音くんは、他人(ひと)に甘えることにまだ慣れていないんです。ふたりの夫に焼きもちを妬かれながらも自分の世話をしてくれる光希さんのことを気にはなってるんですよ」 奏音くんの顔を眺める光希さんの眼差しは優しい。慈しみに溢れていた。 奏音くんはちらちらと横目で光希さんを何度か見たのち、手をそぉーと伸ばし遠慮がちに光希さんの服を掴んだ。 「奏音くん、ありがとう」 光希さんが嬉しそうににっこりと微笑むと、恥ずかしいのか、服を引っ張ったまま顔を真っ赤にさせて俯いてしまった。 僕の大切な家族や、家族も同然の菱沼組のみんなにもようやく慣れてきて、ここでの暮らしに慣れてきた奏音くん。ころころと小学校を変えるのは可哀想だと、岳温泉へは連れていなかった根岸さん。 マスコミは奏音くんの存在にすぐに気付く。だからこのまま菱沼組に守られていた方がいい。そう判断した。 鞠家さんと仲良く手を繋ぎ紗智さんが戻ってきた。七海さんも一緒だった。 「客人に運転させておいてこのふたりは、後部座席でいちゃついていたんだ。このままインター通りのラブホに置いて来ようと思ったんだけど、橘の手料理が待っているって紗智が急に言い出して、急いで戻ってきたんだ。人使いが荒い」

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