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番外編 悲しみの連鎖
すっとドアが開いたような気がして、ピクッと肩を震わせると、
「どうした?」
怪訝そうに顔を覗き込まれた。
「あのね。えっと……」
しーと人差し指を唇の前で立てて、足音を忍ばせてそろりそろりと入ってきたのは……。
「なんだ心か。てっきり橘かと思ってどきっとしたじゃねぇか。驚かせるなよ。てか、心!」
彼が急に慌て出した。
「橘と鞠家が蜂谷に呼び出された。遥琉は未知とお取り込み中だから、しばらく様子を見てから声を掛けてくれって頼まれたんだ」
「鞠家は分かるが、何で橘まで呼び出されたんだ?」
「悠仁だっけ?根岸の息子。東京に向かう新幹線にサツと乗り込んだあと、酔っ払いが車内で騒動を起こしたみたいで、ほんの一瞬サツが目を離した隙に何者かに腹を刺されて、一番近い新白河駅で緊急停車して近くの病院に搬送されたみたい。菱沼組に橘っていう弁護士がいるから呼んでくれって頼んだらしいよ」
「緊急事態じゃねぇか。なんでもっと早く声を掛けないんだ」
彼が声を荒げた。
「未知は恥ずかしがりやなんだよ。服で隠れているところは大切なところなんだよ。いくら身内でも見られたくないでしょう」
「心、お前……」
はっとして目を見開く彼。
「その通りだ。怒ったりして悪かった」
枕元に畳んで置いてあったスーツの上着を掴むと、むくっと身体を起こし、肩に担いだ。
「心、留守番を頼む。未知、先に寝てろ」
そう言い残すと慌ただしく出掛けていった。
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