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番外編 悲しみの連鎖
うぎゃーうぎゃー。陽葵の泣き声で目が覚めた。深夜だから真っ暗だ。と思ったら仄かにオレンジ色の明かりがついていた。
「オムツが濡れて気持ちが悪くて泣いていたみたいだ」
「ごめんなさい、遥琉さんも疲れているのに」
「俺は何もしていないよ」
時間を聞いたらさっきの授乳からまだ1時間も経過していなかった。横に抱っこしたら、何事もなかったようにすやすやとすぐに眠りはじめた。
いつの間にか戻っていた太惺と心望。お手手を万歳し熟睡していた。
陽葵を敷布の上に下ろし隣に横になると、彼も布団の中に潜り込んできて、背中をぎゅっと抱き締められた。
「橘は挨拶もそこそこにしょっぱなから悠仁を怒鳴り散らした。弁護士とは到底思えないその姿をまわりにいたサツと病院スタッフが呆然と眺めていたらしい」
「橘さんが怒るのも無理ないよ」
「あぁ、そうだな。詳細はあとでちゃんと説明するが、悠仁は奏音の親権を放棄することに同意し、橘を後見人に指名した。最後の最後まで俺には息子はいないの一点張りだった。それを聞いて空しくなった。血が繋がっていても、いなくてもそんなの関係ないのにな」
胸が締め付けられるような淋しさを吐露した。
「子どもは親を選べません。だからといって不幸せになるために産まれてきた訳ではありません。子どもを泣かせるなど言語道断。だから、悠仁さんに親権を放棄する手続きを裁判所にすみやかに申し立てるようにアドバイスしただけですよ。決して脅したりしていませんよ」
橘さんがふらっと現れて、太惺と心望が寝ている布団の傍らに座ると目を細めて寝顔を眺めた。
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