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番外編 悠仁さんが犯した罪の重さ
あのあと、奏音くんも呼び出され、光希さんが付き添って事務所に向かった。
似顔絵の女性がママかも知れない。光希さんと根岸さんから伝えられ、スマホの画面を食い入るように眺めたのち、
「ママはかなたとお父さんがきらいになったからいなくなった。かなたがおばかさんだから、いうことを聞かないからだってお父さんにずっと言われてきたけど、ちがってたんだね。ママはかなたのこと、きらいじゃなかったんだね」
彼から聞いた話だと、目を真っ赤に腫らしながらも、みんなに心配を掛けまいと奏音くんなりに気を遣い、気丈にも笑顔を見せていたみたいだった。
その日のうちに警察が組事務所を訪ねてきて、彼や橘さん立ち合いのもと、奏音くんに事情を聞いて、最後に鑑識係が唾液を採取し、見付かった遺体と親子関係があるか、鑑定を進めることになった。
「かなたくん、おかえり」
首を長くして奏音くんの帰りをずっと待っていた一太と遥香。笑顔で駆け寄った。
「かなたのママ見付かったんだよ」
「そっか。サンタさんにおてがみとどいたんだね」
「よかったね」
「うん!」
満面の笑みを浮かべる奏音くん。事情を知る大人たちは皆、胸が張り裂けそうな、なんともやりきれない複雑な思いでこども達を見守っていた。
「ひまちゃん。あのね、きいて。かなたのママ見付かったんだよ」
陽葵を抱っこしあやす僕に気付いた奏音くんが駆け寄ってきてくれた。
「良かったね」
「うん!」
にこにこと笑いながら、しわしわな小さなお手手を、指で撫で撫でしてくれた。
健気なその姿に思わず涙が出そうになり、ぐっと堪えた。
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