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番外編 悠仁さんが犯した罪の重さ
「縣一家は、根岸さんを組長の補佐役として迎えるそうです。伊澤さんにも幹部としてと打診があったみたいですが根岸の側にいるのが俺の役目と固辞したそうです」
縣一家にとっては余所者の根岸さん。長きに渡り、龍一家と菱沼組で幹部として尽力してきた根岸さん。後進の育成にも腐心してきた。遼成さんはその功績に報いるために破格の扱いで縣一家に迎えることに決めたみたいだった。
「カタギになって、カミさんとふたり、岳に移住して、悠々自適の田舎暮らしをするつもりでいたんだ。こんな役立たずの老いぼれより他にもっと適任者がいるはずだって言ったのに、俺じゃなきゃ駄目だの一点張りで、困っちまうな」
「老いぼれは俺だ。お前はまだまだ若い」
廊下から伊澤さんの声が飛んできた。
「穏やかな老後を、根岸とふたりきりで過ごすつもりではいたが、まぁ、しゃないな」
俺がいたのでは奏音が甘えてしまい、新しい家族に馴染めないんじゃないか。根岸さんはそれを心配しているみたいだった。
新幹線が出発する時間が迫ってきて、笑顔で光希さんにバイバイした奏音くんだったけど、姿が見えなくなったとたん走り出してあとを追い掛けた。
追い付いた事務所の前で、出発時間ぎりぎりまで光希さんの足にしがみついていた奏音くん。
柚原さんに、
「うちに帰ろう」
手を差し出され、涙を手でごしごしと拭きながら、ようやく光希さんから離れたみたいだった。
「毎日電話を掛ければいい。そうすれば寂しくない。ままたんが、一日でも早く光希さんママたちと一緒に暮らせるように頑張ってくれている。信じて待とう」
家に帰ってきてから奏音くんを宥める柚原さんを見た那和さんがぷぷっと急に笑いだした。
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