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番外編 恋の予感?
「千里が、卯月家で婿候補を探していると直参に声を掛けたのが、日付が変わる前だから、2時間前だ。誰もないと思ったが一人の男が手を挙げた。腕っぷしは立つし、なかなかのイケメンだぞ」
「亜優は男だよ。それ分かってる?興味本意じゃないよね?」
「分かってるからこうして手を挙げたんだろう。彼は遼成の舎弟だ。何度か亜優を見掛けていて気になっていたらしい」
紗智さんは心望を、僕は陽葵を、そぉーと下に下ろし、寝かし付けてから、スマホの画面をふたりで覗き込んだ。
「こんな人いたっけ?」
「全然覚えてない」
鋭く光るフレームスの眼鏡。上品なスーツ。サイドにゆるく流された黒髪。一度見たら忘れられないくらい男前だった。それなのに全く記憶にないなんて。
「姐さん方は旦那以外の男は眼中にない。喜ばしいことだ」
柚原さんが笑っていた。
「ねぇ、誰かに似てない?眼鏡をしているから分かりにくいけど目の辺りとか顔の輪郭とか雰囲気とか」
「言われてみれば誰かに似てる。えっと誰だろう」
紗智さんと目が合った。
「あっ、そうだ!甲崎さんだ!」
見事に声がハモった。
「さすが姐さんと紗智。よく観察している」
「もしかして正解?」
「あぁ、名前は甲崎玲士。マル暴の甲崎の弟だ。遼成らは甲崎とは呼ばず玲士と呼び捨てにしている。若い衆からは玲士さんって呼ばれている。元区役所職員という変わり種だ。年はウ―とフーと同じくらいだ」
「なんでまた公務員を辞めたんだろう」
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