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番外編 信孝さんの妹

「プライド有無の問題じゃない。いつなんどき何があるか分からないんだ。あの時謝っておけば良かった。それに気付いたときはもう遅い。遼成さんはなんて?」 「何か大切なことを忘れていないかの問い掛けに、遼禅さんはなんのことだと聞き返していました」 鷲崎さんが遥さんにしたこと。詳しいことまでは分からないけど、それは人としての尊厳を踏みにじる決して許されない行為。いくら組を守るためとはいえ、絶対にやってはいけいこと。人の犠牲の上に成り立つ幸せなどあり得ない。彼やお祖父ちゃんがそんなことを口にしていた。 それと同じことが縣一家でも行われていたなんて。にわかには信じられなかった。 なりを潜めていた黒竜が楮山と西岡の合流を待っていましたとばかりに行動を起こしたのはその日の夜、あと5分で日付が変わるというときだった。 「業界最大手の食品会社と、都内に本社がある上場企業の信販会社にランサムウェアによるサイバー攻撃を仕掛けた。身代金は100億だ」 陽葵がどういう訳かぐずって泣いてばかりいて。太惺と心望を起こさないように、リビングで陽葵をあやしていたら、鞠家さんが血相を変えて駆け込んできた。 「ランサムウェアとは身代金要求型ウィルスのことだ。おそらく顧客情報を狙ったんだろう。地竜から何か連絡はあったか?」 「いや、まだだ」 「遥琉さん、地竜さんに何かあったの?」 なんだろうすごく嫌な予感がした。

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