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番外編 死神

「気にするな。未知も横になった方がいい。陽葵が眠ったら連れていくから」 「ありがとう七海さん」 七海さんか頭を手で支えながら陽葵を抱っこしてくれた。 「あ、そうだ遥琉。くれぐれも未知に悪戯しないこと」 彼が手を握ってくれて。一緒に寝室に戻ろうとしたらまさかのダメ出しを食らい、ぐうの音も出なかった。 楮山組から次はお前らの番だ。ぶっ殺すと血文字で書かれた脅迫文を送り付けられ、身の危険を感じた柚さんが兄を頼り子どもたちを連れて福島に避難してきたのはそれから数日後のことだった。 死んでも縣家には……あの人には絶対世話になりたくない。あの人とは遼禅さんのことだ。姉一家をなんとか助けようと手を差しのべた龍成さんの申し出さえ拒否した。 「帰宅途中だった一央がひき逃げされて全治二ヶ月の重傷を負った。次は間違いなく私たちよ」 よほど怖い想いをしたのだろう。奏音くんと同じ小学2年生。双子のめぐみちゃんと優輝くんが怯えてがたがた震えていた。 下の子は偶然にも未来くんと同い年で年中さん。(みゆき)ちゃんという名前の女の子はずっと親指をしゃぶり、ママに抱き付き離れようとはしなかった。 「オヤジ図々しいのは百も承知」 信孝さんが何を言わんとしているのか彼には分かっていた。 「お前の家族は俺と未知にとっても、度会さんと紫さんにとっても身内みたいなものだ。だから気にするな。まずはふたりの転校の手続きだ」 一央さんが退院してくるまで、柚さん親子は度会さんの家に身を寄せることになった。

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