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番外編 死神

お昼寝から起きた太惺と心望は紗智さんと那和さんにしがみつき目を真ん丸くてお兄ちゃんたちを眺めていた。 これだけ賑やかなのに陽葵は僕の腕の中ですやすやと熟睡していた。 信孝さんは子どもたちを彼と橘さんに頼みナオさんに面会するために病院へ慌ただしく出掛けていった。 「あの卯月さん、九鬼総業の若頭だった男が菱沼組で厄介になっているという噂は本当ですか?」 柚さんが思い詰めたような顔で彼に声を掛けた。 あのね遥琉さん。陽葵を寝かし付けながら恐る恐る彼に声を掛けた。 「縣家の人間関係をややこしくした張本人は言わなくても分かると思うが遼禅さんだ」 遼成さんは婚外子として生まれ母方の名字である昆を名乗り、龍成さんを次期組長にすべく心血を注いできた。でも当の本人の龍成さんは組長より光希さんにしか興味がなく、縣一家を守るため、それまでずっと隠してきた遼禅さんの実子であることを公にして組長に就任したこと。 水商売をしながら信孝さんと柚さんを育てていた信孝さんのお母さんがどういった経緯で遼禅さんに出会いイロになったかはよく分からないけど、やがて龍成さんが生まれると、本妻が乗り込んできて龍成さんを信孝さんのお母さんから取り上げて本宅に連れていってしまったこと、病気で母親を亡くした信孝さんは柚さんと遼禅さんに引き取られたものの、それが本当の意味での地獄のような生活のはじまりだったことなどを話してくれた。 「詳しい話しをしなくてもだいたいの予想はつくだろう。遼禅さんは未知も知っての通り根っからの昭和のヤクザだ。女であればたとえそれが娘でも利用するような男だ」 彼の言葉を聞いてみんなが話していたことを思い出しはっとした。

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