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番外編 死神

リーのマインドコントロール下にあった彩さんの責任能力を問えるかが今回の裁判の争点です。弁護側は彩さんは元々鬱病を患っていたことを明らかにし、マインドコントロールによる心神喪失、心身衰弱を主張してくるはずです。橘さんは険しい表情を崩さなかった。 「弁護士って、あのチャラチャラした呑み屋のねえちゃんみたいな女弁護士だろ?楮山組の若い衆を弾よけにして顎で使っている」 「私の知り合いの弁護士はみな、川合弁護士は弱い者の味方ではない。金の亡者で楮山組の姐と、誰も快く思っていません」 「もし万が一無罪放免になったら?」 「まさに犯罪者野に下る、です。ほとぼりが冷めたらまた未知さんと、尊さんの夫である青空さんの命を狙ってくるでしょうね」 「そういえば青空は?秦さんは元気なのか?」 「颯斗さんと睦さんを匿い、四人で身を隠しているはずです」 「無事ならそれでいい」 ずっと危惧していたから、ホッとして胸を撫で下ろした。でもすぐに表情を引き締めると柚原さんに視線を向けた。 「楮山組の若い連中が駅前通りにあるダーツバーで真っ昼間からバカ騒ぎしていると、店長から通報があった。柚原、悪いが蜂谷らを連れて様子を見に行ってもらってもいいか?」 「分かった」 「万が一のこともあるから防弾チョッキを着ていけ」 「あぁ」 「危険を感じたらすぐに逃げてくださいね。あなたに何かあったら、私はひとりでは生きていけません。あなたたは私の大事な夫です。くれぐれも無茶をしないでくださいね」 「優~~璃~~」 橘さんに優しく声を掛けてもらったのがよほど嬉しかったのか嬉し涙を流していた。

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