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番外編 死神

「まさにアメとムチだな」 彼がぼそっと呟いた。 「何か言いました?」 「いや何でもない。あ、そうだ。組事務所で会合があるんだった。思い出した」 席を立つと逃げるようにそそくさとすぐにいなくなってしまった。 「鞠家さんも根岸さんも皆さんお忙しいですからね。本部長としてたまには頑張っていただかないと。若い衆に示しがつきませんからね」 橘さんに嬉しいひと言を言われ俄然やる気になった柚原さん。エプロンを脱ぎ上着を羽織ると、それまでにこにこと笑っていた優しいぱぱたんの顔から一変。苦み走った精悍な顔つきになると鋭い目付きで舎弟たちにテキパキと指示を飛ばした。 「ぱぱたんまるで別人だね」 「褒めればもっとやる気が出るかもよ。ぱぱたんガンバレーって応援してあげようね」 太惺と心望に紗智さんと那和さんが声を掛けると、 「ぱぱ、たー」 「ぱぱ~~た」 満面の笑みを浮かべ両手ぶんぶんと振った。 「たいくん、ここちゃん、ぱぱたん頑張ってくるね」 ますますやる気になった柚原さん。蜂谷さんと合流すると颯爽とダーツバーに向かった。 「ひまちゃんが産まれて3週間無事に過ぎたから、息抜きに週末橘さとデートに行って来いってバーバが柚原さんにぽんっと映画のチケット渡してた」 「でも柚原はただでさえ忙しい橘に気を遣って…というよりただ単に怖くてなかなか声を掛けれない」 「だから泣くほど嬉しかった」 「ふたりに家のことや子どもたちのこと、全部任せっきりだから、なんか申し訳ない」 「マーそれは違うよ」 紗智さんと那和さんの声が見事にハモッた。

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