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番外編 死神
「ふたりの言う通り、未知さんは私たちにとって娘も同然。子どもたちも目に入れても痛くないくらい可愛くて仕方がないんです。ですから私も柚原さんも苦にしてません。遥琉よりみんな素直でいい子ばかりですから、子育てが楽しいです。ご飯も美味しいってもりもり食べてくれますし。紗智さん、那和さん、映画のチケットって聞こえたんですけど、私の聞き間違いでしょうか?」
「え?もしかして聞いてない?」
橘さんは初耳だったみたいで、ほんの一瞬息が止まった。
「そんな暇ないのは分かるけど夫婦円満。喧嘩は駄目」
「夫婦水入らず。バーバが」
「また余計なお世話を……」
はぁ~とひとつため息をつく橘さん。
「未知さんと遥琉、それに紗智さんと鞠家さんのラブラブっぷりをこれでもかと毎日見せ付けられて、構ってあげられなくて申し訳ないとは思ってはいたんですけど……遥琉にはすべてお見通しだったようですね」
柚原さんが言い出すのを待っていたら、いつになるか分からないからと橘さんがスマホを取り出すと、
「橘さん、映画館の近くにホテルいっぱいあるよ」
「ここいいかも」
「橘、たまには甘えたら?」
七海さんまですっと現れ、紗智さんと那和さんと三人でスマホの画面を覗き込み、きゃきゃと盛り上がっていたら、
「なんだ紗智も行きたいのか」
鞠家さんが嬉しそうにニコニコと笑いながら姿を現した。
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