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番外編 死神
「もう高行さんたら」
紗智さんの頬が燃えるように赤くなった。
「だって紗智の唇、砂糖菓子のように甘いから、それ以外も全部食べたくなるんだ。しょうがないだろう?」
紗智さんの腰に片方の腕を回すと自分の方に抱き寄せ、もう片方の手でスイと頤を掬い上げた。
「真っ昼間からイチャイチャするなとは言いませんが、子どもたちの前では謹んでいただけませんか?」
「なら子どもたちがいないところでならイチャイチャしてもいいんだ」
「組事務所や会社をホテル代わりにしなければ私も遥琉もいちいち目くじらを立てませんよ。それはそうと、そんなことを言うためにわざわざいらっしゃったのですか?」
「さすが橘。察しがいいな。姐さんに用があったんだ。姐さん、嬉しいニュースと悪いニュースがある。どっちを先に聞きたい?」
「そんな急に言われても……ねぇひまちゃん、困るよね」
しわしわの小さいお手手をぎゅっと握り締め、腕の中ですやすやとねんねする陽葵の寝顔を見つめた。
「嬉しいニュースはあとのお楽しみにする。だから悪いニュースから聞かせてください」
「実在する弁護士事務所の名前を騙り、尊に差し入れられた衣類に巧妙にカッターの刃が仕込まれていた。刑務官が気付いたから事なきを得たが、同封されていた手紙には物騒な言葉が並んでいた。ムショが決して安全な場所とは限らない」
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