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番外編 死神

数十億円ともいわれるリーの隠し財産はいまだに見付かっていない。だから楮山は川合を彩の弁護人にして四六時中監視させているんだろう。彩が無罪放免になってもそう簡単には口を割らない。だから尊を拐って人質にして吐かせる魂胆なのだろう。彼がそんなことを話していたことを思い出した。 唯一の救いは、那奈姉さんや両親の居場所を楮山組にまだ知られていないということだ。両親とはほとんど連絡を取り合ってない。いつの間にか携帯の番号も変え、引っ越ししてしまった。新しい番号も住所も知らないから両親からの連絡を待っているしか手立てがないのがなんとも歯痒い。 那奈姉さんからは一ヶ月に一回元気だから心配しないでと短く綴られたメールが届くだけで、どこで何をしているのかまでは教えてはくれない。家族を守るためヤクザを辞めてカタギになったんだもの。 どうかこのまま西岡や楮山組に見つからないように。僕には祈ることしか出来ない。 「那奈姉さんや両親が無事で良かった。鞠家さん、嬉しいニュースをありがとう」 「姐さん、実はもうひとつある」 「もしかして地竜さんの安否が分かったの?」 彼に焼きもちを妬かれるとは分かっていても地竜さんが心配で心配で何も手につかなかった。 「インターポールに派遣されていたとき、ある国の警察官と懇意にしてもらっていたんだが、彼が仕入れた情報では、地竜が中国に入国する前に黒竜が行動を起こしたようだと。いまだに生死不明だが地竜が生きていると信じて待ち続ければきっと叶う日がくる。急襲された養護施設に国際医療チームが派遣され人命救助に尽力している。生き残った子どもたちを安全な第三国に亡命させる動きも出てるみたいだ。だから安心していい」 「ありがとう鞠家さん」 地竜さんがいつか必ずここに帰ってくるって信じて、彼と子どもたちと待つことを改めて決意した。

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