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番外編 埋もれ木

「あかちゃんみてい?」幸ちゃんがちょっこり顔を出した。 「うんいいよ」 柚さんも一緒に部屋に入ってきた。 「いまだにあの遥琉が家庭を持って父親になったこと自体信じられなくて。菱沼組を継いだって聞いた時も何かの間違いだろうってしばらく信じることが出来なかった」 柚さんが陽葵の顔を無表情で覗き込んだ。 「みゆちゃんだよ。よろちくね。おててちっちゃくてかぁいい」 幸ちゃんが手を伸ばしおっかなびっくり、額の上あたりをを撫で撫でしてくれた。 「てっきり橘を姐に迎えると思ってた」 陽葵を可愛がる幸ちゃんを冷ややかな目で見る柚さん。 「あの柚さん……」 「これだけは言わせてもらう。ヤクザのヤの字も知らない、姐さんの姐という字も知らない、なんでまたどこにでもいるようなあなたを選んだのかしら。橘の方がまだましだった。違う?」 棘のある言葉が心に容赦なく突き刺さる。 信孝さんの妹ならきっと優しいひと。 そう思い込んでいただけに、胸が苦しくて、そして辛かった。

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