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番外編 埋もれ木

「未知いいか?」遥琉さんの声とともにドアがすっと開いた。 「ごめんなさい」 泣き顔を見られたくなくて下を向くと、 「謝るのは俺の方だ。泣かせてばっかでごめんな。げっぷは任せておけ」 陽葵をたてに抱っこすると背中を優しく擦ってげっぷをさせてくれた。 「未知、これだけは言わせてくれ。きみは俺には勿体ないくらい素敵なひとだ。きみに出会ってかけがえのない宝物を授かり、たくさんの幸せをもらった。俺の妻になってくれてありがとう」 「遥琉さん僕……」 「不安な気持ちにさせてすまなかった」 隣に座ると肩をそっと抱き寄せてくれた。 「ごめんなさい、こんな格好で」 慌てて服を直した。 「しまう必要ないのに。チラ見する絶好の機会だったのに、残念だ」 「もう遥琉さんのエッチ」 真面目な顔付きで何を言い出すかと思ったら。頬っぺをこれでもかと膨らませ睨み付けると、 「未知は泣き顔も可愛いけど、笑っている方がその何倍も可愛い。だからいつも笑っててくれ」 その頬っぺにチュッと軽く口付けをされた。 「柚原、待って!ちょっと待って!治療がまず先でしょう」 「こんなのかすり傷だ。たいしたことない。姐さんは大丈夫か?」 柚原さんと那和さんの声がドアの向こう側から聞こえてきた。 「未知を溺愛するのがもうひとり来たな。橘といい根岸といい、みんな親バカで困ったもんだな」 彼が苦笑いを浮かべた。

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