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番外編 埋もれ木

「威勢ばかりよくて俺たちの面を見るなり尻尾巻いて逃げやがった。まさに虎の威を借る狐だな」 「柚原さん、手の甲の傷……」 「あぁこれな。他の客に注意されて逆ギレして、物騒なモノを振り回していたからな。止めようとした時に刃先が触れたんだ。なぁにこんなのかすり傷だ。それなのにみんなして心配して、たいしたことないのにほら、この通り包帯をぐるぐると巻かれた。利き手の方じゃなくて良かった」 左の手の甲を掲げ見せてくれた。 「お、ふたりとも。ぱぱたんが帰ってきたのが分かったのか」 手でバランスを取りながら、ふらふらしながら太惺と心望が柚原さんに向かってゆっくりとあんよしてきた。 「パパ~~たぁ~~」 「ほら、おいで」 柚原さんが膝を立てて座り両手を大きく広げると、ふたりしてまるで競うように胸のなかに飛び込んでいった。 「いゃあ~~ふたりともめんごいな。姐さん、柚に何を言われても気にするな。オヤジの姐さんは未知しか出来ない。優璃や紫さんや度会さんら幹部全員太鼓判を押している。だからもっと自信を持て」 彼に励まされ、柚原さんにも励まされ、少しずつだけど元気が沸いてきた。

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