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番外編 埋もれ木

「頼むからいっぺんに喋るな」 スマホに向って文句を言う彼。電話の相手は光希さんと遼成さんと龍成さんだ。 「分かった。信孝に向かわせる」 電話を切ると鞠家さんを呼び出した。 「信孝に電話を何度掛けても繋がらない。蜂谷に光希の妹の家に至急向かう様に頼んでくれないか?柚は光希の妹と家族ぐるみで付き合っていたみたいだ」 「分かった」 鞠家さんがスマホを耳にあてながら事務所に戻っていった。 「一太くんパパ、ママをさがしてくれてありがとう」 めぐみちゃんと優輝くんが幸ちゃんと手を繋ぎ、彼のところに向かうとぺこりと頭を下げた。 「ごめんななかなか見付けられなくて。信孝おじちゃんがきっとママを探し出してくれるから、それまで度会のおじちゃんと紫さんと待っていられるか?」 「うん、だいじょうぶ」 めぐみちゃんは弟や妹の面倒をみるしっかり者のお姉ちゃんだ。柚さんと一央さんが喧嘩ばかりしていて、どうしたらパパとママが仲直りできるのか彼や橘さんに質問攻めしていた。 「みゆちゃん帰るよ。お手手を合わせて、ちゃんとごちそうさまして」 「ママは?」 「はれくんパパがつれてきてくれるって」 幸ちゃんを心配させまいとめぐみちゃんと優輝くんがわざと明るく振る舞った。 カタギとはいえ龍一家の身内であることに変わりはない。だから楮山組に狙われることになった。どれほどの恐怖だったか、考えただけでぞっとする。 「あのね遥琉さん、車で移動中、襲撃される可能性もあるよね?」 何としてでも柚さんの子どもたちを守ってあげなきゃ。

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