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番外編 埋もれ木

柚さんに酷いことを言われたけど、今はそんなこと関係ない。悠長にしてる場合じゃないもの。 「じゃあ事務所で待たせよう」 「バーバ、煙草臭い、男臭い、酒臭いところにこどもたち寝せちゃ駄目。かわいそう」 「そんなこと言われてもな」 「俺と那和が事務所で寝る。それなら一部屋空く」 「じゃあ俺も」 七海さんも手を挙げた。 「客人を事務所に寝せる訳にはいかない」 「遥琉、その気遣いだけ有り難く受け取っておく」 紗智さんと七海さんが子どもたちを部屋に連れていってくれた。 「せめてもシャワーだけ浴びさせてよ」 「那和、シャワーだけとは言わず先に風呂入ってこい」 「いいのバーバ」 「あぁ。遠慮すんな」 お風呂という言葉に太惺と心望がぴくっと反応した。ふたりともぽちゃぽちゃ大好きだもんね。 「ひとりでふたりは無理だって!紗智!」 那和さんがふたりいっぺんに抱っこすると、慌てて紗智さんの後を追い掛けた。 腕や足を組んだりほどいたり、メールや時間を見るためにスマホをチェックしたり、ソワソワしながら彼が信孝さんからの電話を待っていた。 「遥琉さん寒くない?」 肩にタオルケットをそっと掛けると、 「お、悪いな」 疲れが滲む表情がふっと和らいだ。 「柚の子どもたちは?」 「幸ちゃんは熟睡してる。めぐみちゃんと優輝くんは布団のなかでまだモゾモゾしてる」 「そうか。心配で寝れないか」 「うん。橘さんが添い寝してくれてるけど、なかなか寝付けないみたい」 ちらっと時計を見ると10時半を過ぎていた。

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