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番外編 埋もれ木

「柚は?見付かったか?」 着信が鳴ると同時にスマホを耳にあてる彼。事態は予想していたよりも深刻だった。 「楮山は柚を解放する条件として遼成に昇龍会を脱退し、傘下に入れと迫っている」 「そんな……」 知らない町をあてもなくさすらっていた柚さん。途中でスマホの電源もなくなり帰るにも道が分からず迷子になり、コンビニエンスストアに寄り店員に事情を説明しスマホを借り、信孝さんに電話を掛けていたとき、ずっと柚さんをつけていたガラの悪そうな男達が大挙して押し掛けてきてあっという間に柚さんを連れ去ったみたいだった。 「楮山はめぐみと優輝の実父だ」 赤く腫れあがった左頬を氷嚢で冷やしながら鳥飼さんが姿を見せた。フーさんも一緒だ。腕まくりしている腕は蚯蚓腫れのようになっていた。恐らく柚さんと取っ組み合いの喧嘩をした時に引っ掻かれたのだろう。 「楮山は九鬼のお気に入りだったからな。遼禅は柚を楮山に差し出したんだよ。同盟を結ぶためにな。俺はすぐに柚を助け行った。でもすでに楮山にあやしいクスリを打たれレイプされたあとだった。クスリでらりって正気を失い舎弟たちにも慰み者にされるところを助け出した。その時の子どもがめぐみと優輝だ。奏音の母親も柚と同じ目に遭ったのかの知れない。柚は俺のことを覚えていなかった。そりゃそうだ。楮山は俺の部下だった男だからな。俺も悪党だったが、楮山の人を人とも思わない、人の道に外れる卑劣な行為をどうしても見過ごす事ができなかった。だから、柚を助けた」 黙って聞いていたフーさんが鳥飼さんの肩をそっと抱き寄せた。 「トリ、ワルクナイ」

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