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番外編 埋もれ木

ぼそぼそとドアの向こう側から声が聞こえてきたからどきっとした。 この声は……そうだ、めぐみちゃんの声だ。 「わたしのパパとママはけんかばかり。止めてってめぐみやゆうきがたのんでも止めてくれない。ママ悪くない。おこらないで、たたかないでってパパにたのんでも、パパ、ママをたたく。おこるの。信孝おじちゃんも、遼おじちゃんもそんなことしないのに……」 啜り泣く声が聞こえてきた。 「未知、めぐみのことぎゅっと抱き締めてやれ。俺が抱き締めたらセクハラになるだろう?頼む」 「うん」 上体を起こしちらっと子どもたちの寝顔を眺めた。 「子どもたちのことは任せておけ」 彼の頼もしい言葉に大きく頷き、布団から出て、ドアに向かった。 そぉーと、数センチだけ開けて隙間から下を見ると、 「一太くんママ?」 ドアに寄り掛かり体育座りしていためぐみちゃんが驚いたように顔を上げた。 「お話ししてもいいかな?」 僕よりも橘さんが適任者のような気もするんだけど。 「うんいいよ」 めぐみちゃんにぶつからないようにドアをゆっくりと慎重に開け、隣に腰をおろした。 「なんか緊張するね」 何をどう話せばいいか分からず戸惑っていると、 「甘いミルクのにおいがする」 めぐみちゃんの方から甘えるように体を擦り寄せてきた。

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