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番外編埋もれ木

亜優さんとちゃぶ台?あ、それってもしかして……。 鈍感な僕にもなんとなくだけど分かったような気がした。 「橘さん、もしかして玲士さんが来ているんですか?」 「危険な任務なのにも関わらず、未来の花嫁と、彼の家族に一目でも会えるならと真っ先に手を挙げたみたいですよ。命を落としたら元もこうもないのに。でも、まぁ、恋は盲目っていいますし、遅かれ早かれこんな日がいつか来るとは思っていましたから。遥琉のちゃぶ台返し楽しみに待ってましょう」 にっこりと笑うと陽葵をあやしてくれた。 他人の芝生は青く見えるという言葉があります。意味は自分の物より他人の物が良く見えてしまうという意味のことわざです。 一央さんは、こともあろうか柚さんと未知さんを比べていたそうです。心無い言葉で柚さんがどれほど傷付いたか。 「せっかく授かった命なのに、本当に俺の子かって、普通そんなことを聞かないよ」 「一央さんは柚さんに謝罪したい、やり直したいと何度も連絡を寄越しているみたいですけど、柚さんは完全に無視です」 福島に来てから子どもたちの笑った顔より泣いた顔しか見ていない気がする。 ー東京地検の前です、傍聴券を求め長い列が……ー テレビから流れてくるニュースに、息が止まったかのように立ちすくんだ。

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